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高尿酸血症

高尿酸血症とは

高尿酸血症とは高尿酸血症は血液中の尿酸濃度が7.0mg/dL以上になる状態です。この状態が持続すると、溶解しきれない尿酸が結晶化し体内に蓄積します。これが関節で発生すると「痛風」と呼ばれる強い痛みを伴う炎症を引き起こし、腎臓に蓄積すると「痛風腎」に至ります。
高尿酸血症は痛風以外にも、高血圧や心疾患、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病のリスクを増加させるとされています。それゆえに、尿酸値を適切な範囲内に保つことが重要とされているのです。

高尿酸血症の種類

高尿酸血症には3つの主要なタイプがあります。1つ目は「尿酸排泄低下型」で、腎臓の尿酸排泄効率が低い状態です。次に「腎負荷型」は、腎臓への尿酸負荷が増えて血中尿酸値が上昇します。最後の「混合型」は、これら二つの要素が組み合わさった状態です。腎負荷型はさらに、「尿酸産生過剰型」と「腎外排泄低下型」に分かれます。
高尿酸血症を発症した患者様の約60%が尿酸排泄低下型、約10%が腎負荷型、約30%が混合型であるとされています。重要なのは、ほとんどの患者様(約90%)が尿酸排泄低下の傾向を持っていることで、血中尿酸値の上昇には主に尿酸排泄の低下が関係しているという点です。

高尿酸血症と痛風の違い

高尿酸血症は血中尿酸値が上昇している状態を指しています。その結果として、関節に尿酸結晶が形成されることで痛風が発生します。痛風は非常に激しい痛みを伴い、風が触れるだけでも痛むほどです。この病気は主に3つのパターンに分類されます。

  • 尿酸の過剰生成
  • 尿酸の排泄不足
  • 生成と排泄の両方に問題がある混合型

高尿酸血症は男性に多く見られるのですが、これは女性ホルモンが尿酸排泄を促進するためです。女性の患者数は安定していますが、男性では増加傾向にあります。
また、高尿酸血症や痛風の発症には遺伝的要因と生活習慣などの複合的な要因が関与しているとされています。

高尿酸血症の経過と症状

高尿酸血症の経過と症状高尿酸血症は通常、症状を伴わない状態ですが、痛風が発生すると、足、膝、腰、肩、肘、手などの関節に強い痛みが現れ、関節が赤く腫れ上がることがあります。初期の痛みは一時的ですが、痛風が再発するごとに痛みの期間が延び、症状が慢性化する傾向があります。

無症候性高尿酸血症期

尿酸値が高い状態でも、痛風発作がまだ起きていない時期は、自覚症状がなく危機感を感じにくいものです。しかし、この時期に生活習慣を見直し、尿酸値をコントロールすることで、将来的な痛風発作のリスクを減らすことが可能です。

痛風発作期

尿酸が結晶となり、足の親指の根元の関節に腫れと突発的な強い痛みが生じることがあります。最初は痛みが数日~2週間程度で収まることが多いですが、痛風が再発するたびに痛みの持続期間が延びる傾向にあります。

慢性結節性痛風期

痛風が進行すると、関節の腫れや痛みが慢性的になり、最終的には関節の変形を引き起こすことがあります。さらに、痛風は狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの循環器系疾患のリスクを増加させるため、注意が必要です。

高尿酸血症の原因

高尿酸血症の原因高尿酸血症と痛風の主な原因は以下の通りです。

  • アルコール(特にビール)の飲みすぎ
  • プリン体の多い食品(レバーや干物など)の摂りすぎ
  • 肥満
  • 尿酸排泄の困難さや、体質的に尿酸が多くなりやすい傾向、または遺伝的要因

尿酸は、肝臓でプリン体が分解された際に生成される老廃物です。尿酸が過剰になる、もしくは適切に排泄されずにいると、血液中の尿酸濃度が上昇し、高尿酸血症を引き起こします。高尿酸血症の患者様の大部分(約60%から70%)は、尿酸の排泄不足が原因であると考えられています。

高尿酸血症になりやすい人

高尿酸血症になりやすい人には、以下のような特徴やリスク要因があります

食生活

レバー、内臓肉、魚卵、貝類、ビールや焼酎などはプリン体が多いです。

肥満

肥満は尿酸値を上昇させる要因の一つです。

生活習慣

運動不足の人。適度な運動は尿酸値のコントロールに役立ちます。ストレスが多いと尿酸値に影響を与えることがあります。

遺伝

家族に高尿酸血症や痛風の患者がいる人は遺伝的な要因が影響することがあります。

性別と年齢

男性は女性よりも尿酸値が高い傾向にあります。特に中年以降にリスクが高まります。

薬の影響

利尿剤や一部の降圧薬など、尿酸値を上昇させる薬があります。

疾患

糖尿病、高血圧、腎臓病などがある場合、尿酸値が高くなるリスクが増します。

高尿酸血症を放置するリスクと合併症

高尿酸血症は放置すると痛風、尿路結石、腎障害などの健康問題を引き起こすリスクが高くなります。また、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病との合併が多く見られ、これらは動脈硬化を促進し心血管疾患の発症に繋がる可能性があるため、高尿酸血症の管理は重要とされています。

痛風

痛風は体内の尿酸が過剰になり、溶け切れずに結晶化し、関節に蓄積することで発症する病気です。突然関節が腫れて激痛を感じる「痛風発作」は、特に足の親指の根元でよく発生します。また、「痛風結節」と呼ばれる硬いしこりが手の指、耳、足の親指などに形成されることもあります。

尿路結石

尿路結石は、尿の流れる経路にある腎臓や尿管、膀胱、尿道に硬い石が形成される疾患です。高尿酸血症の状態では、尿が酸性になる傾向があり、尿中の尿酸濃度も上昇するため、結石が形成されやすくなります。結石が尿管を通過する際には、強い痛みが発生するようになります。

腎障害

高尿酸血症が持続すると、腎臓へのダメージを蓄積され、腎障害を引き起こすリスクが高くなります。腎障害が発生すると、尿酸の排泄が困難になり、さらに尿酸値が上昇するという負のスパイラルが生じます。
腎障害が進行すると、慢性腎臓病(CKD)に至ることがあり、最悪の場合、人工透析や腎移植を余儀なくされるリスクがあります。

高血圧

高尿酸血症と高血圧はしばしば併発するとされており、高血圧を併発する高尿酸血症の患者様の大多数(90%以上)が、尿酸の排泄が困難なタイプ(尿酸排泄低下型)であると報告されています。

メタボリックシンドローム

高尿酸血症はメタボリックシンドロームと合併するケースが多いです。メタボリックシンドロームの患者様では尿酸の再吸収が過剰になる傾向があります。これにより尿酸の排泄量が減少し、結果として血中尿酸値が上昇するとされています。

生活習慣病

高尿酸血症は、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病との関連が指摘されています。尿酸の過剰な再吸収や、排泄不足が尿酸値の上昇に影響しているとされ、これらの状態は動脈硬化や心血管疾患のリスクを高める可能性があります。

高尿酸血症の検査と診断

高尿酸血症の検査と診断高尿酸血症は、通常、痛風発作以外の自覚症状がないため、診断は血液検査と尿検査によって行われます。痛風発作がある間は正確な検査ができないので、症状が収まった時期に検査を実施します。血液検査では血中の尿酸濃度を測定し、尿酸値が7.0mg/dL以上であれば高尿酸血症と診断されます。尿検査では、尿酸の排泄が適切に行われているか、または尿酸の生成が過剰でないかをチェックします。

高尿酸血症の治療

食事療法

食事療法高尿酸血症の予防と管理には、日々の食生活が重要です。肉や魚の過剰な摂取は控え、アルコールやプリン体を含む食品の摂取量を1日400mg以下に抑えることが推奨されます。水分補給を怠らず、お茶や水をこまめに摂取して脱水を防ぎましょう。また、糖質制限ダイエットによる肉や魚の過剰摂取も尿酸値を上げる原因となるため、脂質、タンパク質、炭水化物、野菜をバランス良く摂取することが大切です。

運動療法

適度な運動は肥満防止と生活習慣の改善に役立ちます。しかし、高尿酸血症の患者様が無酸素運動のような激しい運動を短時間行うと、尿酸値が上昇する恐れがあるため、注意が必要です。まずはサイクリング、ジョギング、ウォーキングなどの有酸素運動を積極的に行い、会話ができる程度の強度で行うことから心がけましょう。

薬物療法

薬物療法は、痛風発作の経験がある方や、尿酸値が9mg/dL以上の方に適用されます。尿酸値が8mg/dLでも、メタボリックシンドロームや糖尿病など他の疾患を併発している場合は、痛風発作のリスクが高いため、薬物療法が検討されます。痛風発作がある場合は、尿酸生成を抑制する薬で尿酸値を6mg/dL以下に保つ治療が行われますが、尿酸排出を促進する薬の使用は尿路結石のリスクを考慮して慎重に行われます。
高尿酸血症は治りにくい疾患で、薬物療法を中止すると尿酸値が再び上昇し、長期間放置すると合併症が生じる可能性があるため、継続的な服用が必要です。痛風発作時には、まず痛みを和らげる治療を行い、その後尿酸値を管理する治療に移行します。発作中は、消炎鎮痛剤を用いて痛みを軽減し、関節の炎症を抑えることが必要です。

高尿酸血症は治るのか?

高尿酸血症は治るのか?高尿酸血症自体を完全に「治す」ことは難しいですが、症状をコントロールし、合併症を予防することが重要です。高尿酸血症は適切な管理と治療により、痛風発作や他の合併症を予防することができます。生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることで、尿酸値を正常範囲内に保つことが目標です。
しらかわ内科クリニックでは、総合内科専門医・循環器専門医である院長が、お一人おひとりの状況に合わせて適切な治療法をご提案いたします。
検査に引っかかった方は是非当院へご相談ください。